2011/01/24

DIR EN GREY薫「アレンジしがいがある」新曲の魅力語る


DIR EN GREYがニューシングル「LOTUS」を1月26日にリリースする。衝撃的なビデオクリップで話題を集めた前作「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」から約14カ月ぶりに発表される本作。タイトル曲はスクリームやグロウルを排除したメロディアスなミディアムナンバーで、カップリングには人気曲「OBSCURE」の新録バージョンと「冷血なりせば」のライブ音源を収録。3曲ともミキシングとマスタリングに海外の著名エンジニアを迎えており、よりダイナミックなサウンドを楽しむことができる。
今回ナタリーでは、メンバーの薫(G)にインタビューを実施。ニューシングルについての話題はもちろんのこと、アルバム「UROBOROS」(2008年11月発売)のツアーを終えバンドがたどり着いた現在の状態、さらには今年リリースが予定されているニューアルバムについてなど、興味深い話をじっくり訊いた。
取材・文/西廣智一

「UROBOROS」という縛りがなくなって自由にやれる

──昨年秋と今年の頭にDIR EN GREYのライブを観たときに、昨年1月の日本武道館公演の頃と比較すると、ちょっとバンドの印象が変わったなと思ったんです。音自体が全体に太くなった気がしたのと、ステージ上のみなさんから余裕というか楽しんでいるような雰囲気が感じられて。何か心境の変化があったんでしょうか?
「UROBOROS」という縛りがなくなって、自由にやれてるっていうことの表れなんじゃないかな。武道館公演が終わってからいろいろと可能性を探っていこうっていう感じで、わりとフラットな状態で曲作りを始めて。そういう中でツアーが始まったので、精神的には以前より自由だったというか、さっき言われたように余裕があったと思うんです。あとは、やり慣れてる曲でライブが構成されてたんで、ちょっと肩の力が抜けた状態になれたのは確かですね。
──アルバムを披露するツアーとは違って、純粋にライブをすることが楽しめたと。
そういうことです。
──昨年10月には4年ぶりに「LOUD PARK」に出演しましたが、前回とは観客の反応が違ったという声をよく耳にしました。そういう、状況が変わったという手応えは実際に感じましたか?
とにかくもう、やってる自分らが一番びっくりしたというか。直前までは4年前みたいな、割と寒い反応なんやろなっていう感じでステージに立とうとしてたんで、すごく驚きましたね。今回はお客さんに助けられた部分も多いし、自分らのライブをより展開しやすくなったし、だから手応えというよりは……ちょっと居場所があったというか。今後につながるライブにはなったなと思います。
──4年前に出演した頃って、DIR EN GREYが海外での活動を積極的に始めたくらいのタイミングで、いわゆる海外のロックを聴いてる人たちへの知名度や認識もそこまで高くはなかったと思うんです。でも近年の活動の成果が、「LOUD PARK」の観客の反応からも透けて見えた気がしました。
そうなんでしょうかね。あと、うちのワンマンライブのチケットが取りにくいという問題があるんで、ああいうイベントだと観にきやすいというのもあるし。もちろん話をもらえないとできないですけど、今後もたまには出たいなと思います。

「LOTUS」はすごくアレンジのしがいがある曲

──新曲の話を伺いたいんですけど、いつ頃から録り始めたんですか?
去年の、本当に1年前ぐらいですかね。武道館が終わった直後から準備に入って、2月ぐらいにちょっと合わし始めてっていう感じで。
──それはシングルというよりは、次のアルバムに向けての制作ですか?
そうです。
──この曲は年末年始のツアーでも演奏されてましたが、最初に聴いたときに音が太いけど音の隙間の部分が効果的に出てる曲だなと感じて。そこは今までの、同じようなラウドでメロディアスな曲とはちょっと印象が違うなと思ったんです。
すごくアレンジのしがいがある曲というか、いろんな方向に進んでいける曲なんですよね。うちの場合って、どういう感じに聴かせるかっていうところで、もっといろんなサウンドが欲しくなってくるタイプで。波がすごく大事というか、上がるところと下がるところ、押し引きを気持ち良く聴かせていかないとせっかくのメロディも良い感じに聴こえてこないので、そういう意味では間をすごく意識して作りましたね。あと、今まではどんな状況でもギターがしっかり聴こえるっていうミックスが多かったんですけど、今回は引っ込めるところは本当になんとなくギターが鳴ってるようなミックスなので、音の押し引きがより見えやすいのかなと思います。
──楽器ひとつひとつが主張して、ぶつかり合って一丸となる感じとは違って、今回は例えばギターが曲の世界観を作るための、演出の道具みたいに後ろで鳴っている印象もあります。
そうなっていたらうれしいですね。
──曲自体もすごくコンパクトですが、そのへんも意識しましたか?
なるべく無駄な部分はないよう、そこは意識してます。うちの場合、わりと最初の段階でいろんなアイデアをぶちこんでいくので、最終的によくわかんなくなってくるんですよ。それを良い感じでまとめあげられると「さぁ、じゃあ録ろうか」っていう段階になるんです。

自分は曲を組み立てていく人間だと思う

──こういうミディアムテンポのメロウな曲だと、ギターソロが入ったり、曲の長さもちょっと長めになって複雑なアレンジが入ったりするケースもあると思いますが、「LOTUS」はそういう感じではないですね。
別にそれでもいいと思うんですけど、今回自分はそういうアレンジには頭がいかなかったっていうだけ。自分がそうしたかったら今言ったような流れにしちゃうかもしれないですけど。
──歌がかなり前に出ているイメージですが。
そうですね。うちのボーカル(京)は基本どこにでも歌を入れてきたがるタイプなので。こういう曲をやってもずっと声は入ってるんですよ。昔からいろんなところに声を入れたがるし。
──薫さんにはギタリスト、コンポーザー、バンドの5分の1としての立ち位置と、いろんな役割があると思います。そんな中で、この曲ではもっとギターで主張したいとか、この曲はこういうメロディを強く出したいとか、そういうバランス感ってどうやって取っているんですか?
自分は……うーん……ギタリスト的な位置ではなく、曲を組み立てていく人間だと思うんです。自分が曲を作って持っていくと、そこにみんなが乗っかってきて色がついていくっていう感じ。だから、ギタリストとしてギターのフレーズを考えて楽しんでるっていう状況にはなかなか持っていきにくいですね。もちろんギターのフレーズやリフ、リズムを弾いたり打ち込んだりして次から次へと構成やアレンジを考えていくんですが。その中で、メンバーが「こういうアプローチは?」と乗ってくる。いちギタリストとして楽曲にどういうアプローチをしていこうか、何か面白い表現をしてみようかって考えるのは、本当に最後で、そのときはわりと形になっちゃってるんで。
──ほかのメンバーが曲を持ち寄ってきた場合も、同じような立ち位置なんですか?
この「LOTUS」の原曲はDie(G)が作ってきたんですよ。割とオーソドックスなコードが乗った曲やったんですけど、そういうところから始めたんで自分はこの曲にどうアプローチしていこうってわりと考えられたかな。そうやってるときはすごく面白いですね。
──ちょっと表現が正しいのかわからないですけど、プロデューサー的な思考というか、ひとつの曲に対してこういう組み立て方をして、こういうギターが乗ってというイメージが薫さんの頭の中にあるのかなと。
うーん、でもプロデューサーみたいに全体を見るのは最後のほうですね。それまではずーっと何かを生み続けて、面白いものをプラスし続けてる感じです。

録音の初期段階から最終形に近い音で録った

──今回のシングルを聴いたときに、ライブ音源を含めた3曲とも、とにかく音が今までとは違うなと感じて。「OBSCURE」みたいなラウドな曲でもギターやドラムの音の粒がすごく聴きとりやすいし、ライブ音源も非常にクリアな音質ですし。音の聴かせ方はやはり強くこだわったんでしょうか?
今回は最初からしっかりしたイメージがあったので、録音のわりと初期段階から最終形に近い音で録ってたんですよ。エンジニアによってはミックスでガラッと変えちゃう人もいるんだけど、今回のベースになる音はあまり余計なものを入れず、生っぽい音でしっかり作ってたんで、あまり大幅に変わることはなかったです。もちろんドラムの音なんかは、日本ではこういう音はなかなか作られへんなっていうものになってるんですけど、全体的な音の質感っていうのはほぼ変わってないかな。
──今回ミックスを担当したエンジニアは、曲に合わせて選んだんですか?
いえいえ。今回は試してみたい奴とやろうと、ただ思っただけで。
──このシングルのジャケットと、エンジニアが過去に手掛けてきたアーティストを事前にイメージして聴いたら、非常に新鮮で良い意味で裏切られたなと。海外のラウド系の音に近いんだけど、ちゃんと日本人らしい繊細さも表現されていて、そこにちょっと驚きましたね。
そうですね。その感じをどれだけわかってくれたのかはわかんないですけど、だからこそなるべく元の音を消さないようにミックスしたのかもしれないです。いくらでも自分の得意な音に変えられるとは思うんですけど、変えてしまうと曲の雰囲気も変わってしまうので、なるべくいじらずミックスしてったんじゃないかなとは思います。

カップリングのために曲を作る感じが好きじゃない

──カップリングの「OBSCURE」についても訊かせてください。ここ何作かのシングルで、過去に発表してきた楽曲を再構築したスタジオ音源を入れてますよね。何年か前に作った曲を改めてレコーディングしようっていう最初のきっかけは何だったんですか?
あんまりシングルのカップリングに新曲を入れたがらない人間なので(笑)。別に入れてもいいんですけど、カップリングっていう扱いの曲が生まれるのもあんまり好きじゃないっていうか。例えばアルバムの中にはちょっとこれは合わへんねんなっていう曲をカップリングにしようっていうのはアリだと思うんですけど、カップリングのために曲を作るみたいな感じがあんまり好きじゃないんです。でも、なんか凝ったものを入れたいっていう思いはあるので、だったら今まで作ってきた曲をもう1回録り直そうかっていう、それが始まりですね。
──DIR EN GREYもデビューから10数年経ってるので、デビュー当時の音と今の音とでは雰囲気が変化してきているし、ファンにとってもあの当時の曲を今の音で鳴らしたらどうなるのかなっていう楽しみ方があると思うんです。プレイヤーとしては、ちょっとチャレンジしてやろうって気持ちもありますか?
「OBSCURE」の場合は、ギターのアレンジが当時ちょっとやってみたかったけどその形には持っていけなかった音を鳴らしてる部分があるので、やっていく中でこういうことにチャレンジしてみようかなというのはありました。だから、逆にカップリングのほうがプレイで遊ぶことができて、自由度は低いようで高かったりするんです。
──原曲のイメージをあえて崩そうとか残そうとかっていうのもいろいろ考えつつアレンジしてるんですか?
そうですね。まぁあんまり変えられてもね、「原曲のイメージないやん」っていうふうになってもしょうがないんで。まったく違う曲みたいな感じも面白くないんで、原曲のイメージは必ず残しつつどれだけ違う感じに持っていけるかっていうほうが面白い。でも、「OBSCURE」の場合はそんなに思い切って変えた部分はあまりなくて、わりとすんなりいったかな。
──DIR EN GREYには音が年代ごとに進化・変化しているバンドっていう印象があるので、例えば5年前はこういう形だったけど2011年のDIR EN GREYが出すとこうなるっていう、そのアップデートのされ方がすごく新鮮で。こういう形で今鳴らんすだっていう面白さを、いちリスナーとしてもすごく感じました。
そう言ってもらえたら、うれしいです。ただ、やっぱり原曲からいろいろ変えられると嫌っていう人もいると思うんで、そこは難しいところですよね。

次作は「聴きにくいアルバム」になる!?

──今回のシングルは、この3曲でひとつの作品として完結してるなっていうイメージがすごく強いですね。
トータルで見れば、実は最初の2曲はシンプルな音の鳴り方をしているので、自然と流れていくのかもしれないですね。それで、最後にちょっと引っかかりのある「冷血なりせば」が入ってくるという。
──で、このシングルを聴くと、近い将来に発表されるであろうニューアルバムが楽しみになってくるわけですが。現在も準備中なんですよね。
そうです。
──このシングルだけでは、なかなか想像できないですよね。やっぱり「UROBOROS」というものすごく大きい作品があって、そこに続く新作がどうなるのかっていうのはみんな気になってるところだと思うんです。現時点で次のアルバムがこうなりそうだっていうイメージはできているんでしょうか?
もちろんイメージしているものはあるんですけど、どんどん変わってるのでそれが最終的にどういうものになるかはちょっとわからないんですね。まぁ「UROBOROS」のようなアルバムでは全然ないですね。ああいう形で、ああいう雰囲気のアルバムでは間違いなくないんで……わりと「聴きにくいアルバム」になるんじゃないかなって気はします。
──じゃあ、「LOTUS」のイメージで聴くとちょっと「えっ!?」って思っちゃうような?
うーん、まぁ最終的にどうなるかは、まだ自分にもわかんないですけどね(笑)。ただ「LOTUS」のジャケットデザインもそうですけど、今度のアルバム含めどんどん新しいことに挑戦していきたいと思ってます。


Source From:http://natalie.mu/music/pp/direngrey02




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