リリースされたばかりのアルバム『DUM SPIRO SPERO』には、ある種の型破り的な美しさが漂っている。構築された完成作に自らナイフを入れてしまう感覚とでも言おうか、そうした緊張感の高いバランスが、彼ら本来の刺激的でヘヴィなサウンドと相まって、不思議な美しさを生み出しているようだ。
そのリリースからわずか3日後の8月6日、彼らはドイツで開催される世界最大のメタル・フェス“Wacken Open Air 2011”のメイン・ステージに出演した。海外での凄まじい歓迎ぶりは、ここ日本でも周知の事実。直後から全11本のヨーロッパ単独公演を行なっている。
そしてアルバム・リリースから約1ヶ月が経過した9月某日、teenaは都内スタジオにて国内ツアー“TOUR2011 AGE QUOD AGIS”リハーサル中のDieとToshiyaに接触。ヨーロッパ・ツアーの手応えと、ライブを経た『DUM SPIRO SPERO』サウンド、そしてついに開催される国内ツアーへの予感を聞いた。
さらには、“UROBOROS再来”と銘打たれて発表された、前アルバムのリマスタリング作品と日本武道館二夜公演の模様を収録したBlu-rayのリリース。2012年1月に開催される大阪城ホールでの “UROBOROS -that's where the truth is-”。
もともと多面性を持ったバンドではあるが、それを限りなく自由に放出された感がある彼らの現在。それがサウンドを痛快なものにしているのかもしれない。話題に事欠かない彼らの真意をDieとToshiyaが語る!!
取材・文◎長谷川幸信
tour & album 1――
欧州ツアー“TOUR 2011 PARADOX OF RETALIATION”
「海外のライブは、結果が全てだと思っているんで
でも個人的にはおもしろかったし勉強にもなりましたよ」(Toshiya)
でも個人的にはおもしろかったし勉強にもなりましたよ」(Toshiya)
――アルバム完成後の一発目が巨大フェスというのもスリリングですよね。
Die:前日に一応機材チェックはしたけど、当日のサウンド・チェックはもちろんないし、ライブ自体が久しぶりっていうのもあるし。前回、“Wacken Open Air 2007”に出たとき、オーディエンスの反応もすごい良くて、他のフェスよりも食いつきが良くて、前回以上のものを見せなあかんなと思ってて…。言い訳みたいになってしまうけど、モニターとかがグチャグチャで、しかも1曲目から新ver.の「蜜と唾」を持ってきたから、なんかドタバタな幕開けのステージになってしまって。それも含めて、フェスというのは簡単なものじゃないなって改めて感じましたよ。
――薫くんがオレンジのキャビネットを新たに導入してましたね。ニュー・アルバムを踏まえたとき、ツアーに向けて機材もいろいろ変えたんですか?
Die:俺は9月の国内ツアーからイヤモニ(イヤーモニター)を使うようになって。プレイをよりタイトに決めていくってことで、音のツブをシビアに合わせるならイヤモニ使うしかないなと。チューニングが低くて曲のテンポが速いと、普通のモニターでは音がボケてくるし。本来はもっとザックリした感じでやりたいのが本音やけど、イヤモニを使うことで、プレイやタッチもシビアになってくる。機材うんぬんよりもそこかな、大きな変化は。
Toshiya:海外ツアーでは特に機材は変えてなかったですね。これから始まる日本のツアーで変えます。ピックアップをJBからハムバッカーに載せ替えました。それだけでパワー感もローも全然変わるし。
――だいぶ理想の音に近付いてます?
Toshiya:いや、JBのときはJBの理想の音を作っていて、ハムバッカーに替えた今、またそのための音作りをしているんで、一概に“理想の音”という言い方もできないんですよ。あと海外のライブ、結果が全てだと思っているんで、そこは真摯に受け止めてます。でも個人的にはおもしろかったし勉強になりましたよ。
――フェスから続いた欧州ツアーでは、ニュー・アルバムからの曲もかなり組み込んでいましたね。
Die:シングルになった曲はやっていたし、アルバムの曲もそこに入れて、新曲は5曲ぐらいか。『UROBOROS』の曲に比べると、反応はまだまだっていうのはあったかな。
――オーディエンス側からすると、曲の浸透度が違いますからね。ライブで初めて新曲を聴くとなれば、身構えるところもあるし。
Die:バンド的には1本1本のライブで少しずつ新曲もまとまってきたかなってのはある。
tour & album 2――
『DUM SPIRO SPERO』ライブ・サウンドへのこだわり
「本来の自分じゃないところ、意識を変えてやっているところがあった
それをライブでやるのは、今までで一番難しいかな」(Die)
それをライブでやるのは、今までで一番難しいかな」(Die)
――その1曲1曲ですけど、初期の自分達も含めたDIR EN GREYを見せていると思うんですよ。それに作り込まれたところも多いものの、すごくライブ感があると思うんです。
Die:でも個人的には、自分の中で自然と鳴っている音やフレーズではないから、この作品は。自分の中のストレートなところとか、自分の好きな部分というのは、極端な言い方をしてしまうと、今のDIR EN GREYにはあまり必要ないというか。作曲やアレンジをしつつそう感じていたから、途中から気持ちを切り替えて制作したかな。それで作り込むギター・アレンジをしたんやけど、その中には自分らしさってのも入っているのかもしれない。ただ、自分の気持ちいいところだけでワッと弾いていけるようなものではなかった。本来の自分じゃないところ、意識を変えてやっているところがあったかな。それをライブでやるのは、今までで一番難しいかな。
Toshiya:俺は、ベーシストとして自分のやりたいことはやれたかなと思います。今までやってきたことと、今のやりたいことをミックスした感じで。でもアルバムを1つ完成させたことで、バンドとしては多分、その作品はもう終わっているという感覚なんですよね。あとはそれを再現するんじゃなくて、また構築する感じなのかな。ライブってものに関しては、アルバムという音源とはまた違うところで5人で新たに作ろうとしている。
――話を聞いていると、今はもう完全にライブ・モードに入っているんですね。それで思ったんですけど、前アルバム『UROBOROS』のときはライブのことを聞くと“再現”という言葉がよく出てたんです。今はそれとはまた違って、新たな形を作るってことですよね。音楽や曲に対する向き合い方が、すごく変わったと感じるんです。『DUM SPIRO SPERO』を完成させたことで突き抜けたような感覚もありますか?
Die:そうやね。今回は最初の曲作りのときも入れると制作期間が長くて、でき上がる前から自分たちで何回も何回も、それこそイヤになるぐらい聴いて。それで作品として完成して。そしたら、もう聴かないですよね(笑)。改めて聴けないというか。気持ちはもうライブに向かっているから、ライブでどうしようかなっていうふうなことにしか頭がいってないから。意識を変えて作品を作っていたから、ライブのことを考えたとき、今まで以上にハードル高くなっているかな。
tour & album 3――
国内ツアー“TOUR2011 AGE QUOD AGIS”の予感
「今度はステージ上のタイム感を5人で共有しようとしている
それによって曲の聞こえ方や手触りも変わると思いますよ」(Toshiya)
それによって曲の聞こえ方や手触りも変わると思いますよ」(Toshiya)
――アルバムとは違った表現の仕方、それぞれの曲が持っている強さが、このツアーの見どころになりそうですね。今日現在、国内ツアー、“TOUR2011 AGE QUOD AGIS”のリハーサルはまだ2日目だそうですが、調子はどうですか?
Die:いや、まだまだ。もっともっとやっていかんと。リハと実際のライブの空気感は、また全然違うから。リハでしっかり合わせて、ライブの空気の中で鍛えていくしかない。
――今回のツアーは9月15日からスタートしますけど、国内ツアーはライブハウスが中心なんですね。
Die:こんなに長いライブハウス・ツアーは2年ぶりぐらいか。『UROBOROS』のツアーで2009年に全国を廻ったとき以来やから。あれはあれで武者修行的で嫌いじゃないけど、ステージが狭いから、機材の問題がいろいろあって。まあ、海外ツアーよりステージ環境はマシやけど(笑)。これだけライブを重ねていけば、何かしら変化はしてくるはずやろうし。今回、9月から始まって12月23日までか。ヨーロッパから始まって、日本でやって、アメリカへ行って、シチュエーションの違うところでライブをやって、その結果、どういうサウンドとグルーヴができているか。そのために1本1本、しっかりやっていかな。
tour & album 4――
『UROBOROS』再来! その真意を語る
「自分達の聴きたかった『UROBOROS』、それは正直な気持ちやから
ライブもまた新たなエネルギーが必要になってくるし」(Die)
ライブもまた新たなエネルギーが必要になってくるし」(Die)
Die:うん。まあ、ライブは後付けやったりするけど。『UROBOROS』のミックスとマスタリングを今やり直していて、違う音にもなるから。それと今の自分らのサウンドで、大阪城ホールでまたやろうと。あのときとは全然違うものになるやろうし。
――『UROBOROS』のリマスタリングは、音像をもっとクリアにしたい考えのもとで進めているんですか?
Die:まず自分らが聴いてみたいなって。当時もそのサウンドを求めていたけど、自分らだけではどうにもならないこともあったし。その後、試しにやってもらった曲があって、その仕上がりを聴いたら全然違ったし。自分らの理想にすごく近かったと思う、それが。
――ひょっとして『UROBOROS』はそのリマスタリング盤でようやく完成ということですか。そして1月の大阪城ホールで、UROBOROSシリーズのライブとして完成形を見るわけですか?
Die:完成形とか、もうあんまりそういう考えはしないけど。リマスタリング盤はまた別の部分かな。『UROBOROS』は1回作った作品やし、後から“これがほんまです”と言うつもりもないし。でも自分達の聴きたかった『UROBOROS』はそれになるっていうのは、正直な気持ちやから。ライブもまた新たなエネルギーが必要になってくるし。
Toshiya:音源に関しては完全に自分達のエゴです。自分達が聴きたいっていう。ライブに関しては、ぶっちゃけて言うと、俺はやりたくない派だったんですよ。『DUM SPIRO SPERO』を出したのに、『UROBOROS』に戻るんかい!?って感じじゃないですか(笑)。そこで葛藤もあったんですが、でも自分達が作って、自分達が聴きたいと思ったリマスタリング盤を出して、ライブをやるならこのタイミング以外はないなと思ったし。『DUM SPIRO SPERO』とちゃんと向き合うためにも、『UROBOROS』の始まった大阪城ホールで締めくくるのもいいのかなと思ったんですよ。今を歩くために、過去をちゃんと清算しておきたいってことなのかな。そうすることで、5人で前を向いて歩けると思うんですよ。
Source From:http://www.teena.ne.jp/pick_up/direngrey/index.html#t_top
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